ラーメンを食べに行こう!
〈18〉

「アンタ、いつもはもっと高いところを飛んだりしてるでしょ!」咲はトラックへ向かって叫んだ。「じゃあ、とりあえず鞄だけでもこっちに投げて!」

「あ、はい!」加賀美は言われた通りに鞄を投げて咲に渡した。

「よし」鞄を受け取ると、咲は立ち止まり、「それじゃ、後で迎えに行くから!」と言って加賀美に手を振った。

「そ、そんなぁぁぁ〜……」遠ざかる加賀美は、とても哀しそうな顔をしていた。「らぁ〜めぇ〜ん〜……」情けない断末魔の悲鳴を残し、加賀美の姿はトラックとともに消えていった。

「……行っちゃったぞ」トラックとともに加賀美の姿が見えなくなった頃、浅見がぽつりと言った。

「あの子はわたしが迎えに行くよ」と咲は言って、鞄を小鳥に渡した。「小鳥、アンタちょっと服にゴミついてるよ」

「え、どこですか?」小鳥は自分の体を眺め回した。「ここだよ」と咲が言って、小鳥の体をパンパンとはたいた。

「ぶつけられたんだって? 酷いことするよね。女の子の服を汚しやがって、まったく……」

「あ、ありがとうございます、咲ちゃん」

 咲は小鳥をはたき終わると、「それじゃさ、わたしは加賀美追いかけるから、悪いけど、ラーメン屋には二人だけで行ってもらえるかな?」

「あ、はい。わかりました……」小鳥が残念そうに言った。

 咲は浅見のほうを向くと、「それじゃ、がんばってね」と言うと、浅見が動転して返事ができないうちに、トラックが去った方向に走っていった。

「……がんばるって、何をがんばるんですか?」小鳥が浅見に聞いた。

「さ、さあ? なんのことやら……」浅見は誤魔化しながら、「あ、それよりもさ、さっきの加賀美って子、すごかったよな、一人で泥棒をのしちゃってさ。護身術とか習ってるのかな?」

「あ、えっと、それはですね……どう説明したものか……」今度はなぜか、小鳥が言いにくそうに言葉を詰まらせた。「あ、それよりも、さっきの泥棒の人! 警察に連絡したほうが……」

 言われて浅見もはっとしたが、二人が振り向いたとき、先ほどまで道に倒れていた泥棒の姿はもうどこかに消えていた。

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