ラーメンを食べに行こう!
〈14〉
咲は加賀美の腕を引っ張って書店に歩いていった。浅見と小鳥が追いかけようとすると、
「すぐ戻ってくるから、二人はそこで待っててよ」
と言って、加賀美とともに書店に入っていった。ぽつんと取り残された二人は、書店の前で咲と加賀美が戻ってくるのを待つことにした。
「浅見くんは、本屋に用事とかないんですか?」
「俺はないけど。新月はないの?」
「わたしも特にないですよ」
「そっか……」
会話が途切れた。
いきなり二人きりにされ、浅見はチャンスを得たというよりもピンチに追い込まれた気分だった。教室でならもっと自然に話せている。しかし、学校の外、お互いが私服でこれから一緒にご飯を食べに行くというシチュエーションに、浅見は少しずつ落ち着きを失っていた。
ふいに自分たちの間に沈黙が落ちていることに気付いて、さらに浅見は焦りを覚えた。何か話さないと、つまらない奴だと思われるかもしれない、そう考えれば考えるほど舌が上手く回らない気がした。
「……ですね」
小鳥が何か言った。
「え?」浅見は自分の考えに没頭しかけていたせいで聞き逃していた。
「ラーメン」小鳥は同じ言葉を繰り返した。「楽しみですね」
「あ、うん……そうだな」答えてから、こんな返し方じゃまたすぐに会話が続かなくなってしまうと気付いて、浅見は他の言葉をつなげようとしたが、そんなことをしなくても、今度は小鳥のほうから話題を提供してくれた。
「あの、浅見くんに聞きたかったことがあるんですけど、いいですか?」
浅見は助け舟を出された思いですぐに答えた。
「俺に答えられることだったら、何でも聞いてよ」
それが助け舟ではなく、泥舟だということにも気付かずに。
「浅見くん」小鳥は言った。「今日はどうしてわたしのことを誘ってくれたんですか?」
「…………!」
核心を突く質問だった。しかし明らかに、小鳥の表情は、本当に想像もつかないので本人に直接聞いてみた、という顔だった。
「いや、そのっ、だから……」浅見は二歩後退し、無意味に両手を振ったりしながら、上擦った声で言った。「なんと言って説明すればいいというか、一言で説明するには難しいというか簡潔過ぎるというか……」
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