ラーメンを食べに行こう!
〈13〉

「基本的には、営業時間が短い店ってのは美味しいとこが多いですよ」ぴんと人差し指を立てて、小鳥が説明を始めた。「営業時間は短ければ短いほど、味に期待できます。あとは、ラーメンの種類が妙に多くないほうがいいです。あったとしても、せいぜいチャーシューメン、海苔ラーメン、ネギラーメンくらいですね。他にも、店頭にラーメンの写真が貼ってあったり、『うまい』とか『江戸ダシ』とか『中華料理』とか書いてない店のほうが、美味しい可能性が高いですね」

「へえ、さすがに好きなだけあってよく知ってるね、小鳥」咲が感心したように言った。

「小鳥さん、すごいです!」加賀美が小鳥を尊敬のまなざしで見ていた。「今から行くお店は美味しいんでしょうかね?」

「あ、それは、わたしも初めて行くお店だから」と、小鳥は浅見のほうを見た。それにつられて咲も加賀美も、浅見を見た。

「……たしか、ラーメンの種類もそんなに多くないし、店の前にはそもそも看板とかなかったと思う」

 実は浅見も友人に連れられて一度行ったことがあるだけなので、詳しくは覚えていなかった。なんとかおぼろげな知識をつなげて返答すると、小鳥が「じゃあ、期待できそうですね!」と言った。

「他には、重要なポイントってないんですか?」加賀美が期待のこもったまなざしで小鳥を見つめて言った。

「あとはですね、店舗がやたら多いチェーン店じゃないほうがいいですし、麺を茹でるときにはタイマーを使っていなくて、一度に作るラーメンの数も少ないとなお良いですよ。それ以外だと、お店の暖簾とかテントとかの色は何色かどうかとか。例えば、暖簾は白か紺のほうが良いらしいですし、テントの色だと……」

「……普通、そんなとこまで気にしてラーメン食べに行かないと思うけど……すごいのは伝わってくるね……」

 咲は呆れたようにそう言い、加賀美は今の薀蓄でますますテンションをあげていた。

 浅見は苦笑いを浮かべながら「そこまではちょっと覚えてないな……」とつぶやいた。

「まだ他にもありまして……」

 小鳥がなおもラーメン店の評価について語ろうとしたとき、咲が「あ、ほら、本屋に着いたよ!」と前方を指差して言った。「加賀美、アンタ買いたい漫画あるんでしょ。行くよ」

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