ラーメンを食べに行こう!
〈11〉

「そうね……難病を抱えた子、とでも思っていてくれればいいかな。だから今回みたいに、加賀美が自分から言い出した我侭ってのはわたしも弱いのよ。なにしろ、わたしはあの子の一番の親友を自負してるからね」

 そう言って、咲は軽く笑った。

 浅見には今の話は半分ほどしか理解できなかったので、「ふうん……」と中途半端な相槌を打つのが精一杯だった。

 体を半分だけ後ろに向けて小鳥と加賀美のほうを見やると、二人はまだラーメンについて熱く語っているところだった。お互いのスープの好みや、トッピングについて話しているようだ。それと、美味しいラーメンについて。

「結局はですね、」と小鳥が言う。「美味しいラーメンを食べた人が、最終的な勝者みたいなものなんですよ! ラーメンに妥協は許されません!」

「わかります、小鳥さん!」加賀美が拳を振り上げて小鳥に応える。「わたしも常々思ってました。美味しいラーメンを満足するまで食べないうちは死んでも死にきれない、って!」

 二人ともずいぶんと熱の入った物言いだな、と浅見は思った。隣を歩く咲も今の会話が聞こえていたらしく「いや、それはどうなのよ」と苦笑していた。

「死んでも死にきれないってのは、大げさな表現だよな」浅見は思ったことをそのまま発言した。

「大げさっていうか、何ていうか……」苦笑しながら咲が言った。「ああ、大げさって言えば……」

「どうした?」

「悪かったわね」咲は申し訳なさそうなぎこちない笑みを浮かべて言った。「デートの邪魔しちゃって」

「――っ、な、ばっ、おまっ!」浅見は傍目にもわかるほど赤面し、狼狽した。

「……もしかして隠してるつもりだった? 小鳥が好きだってこと?」

「だ、だ、だ、だ、だ、だ、だ、」

「誰に聞いたかって?」

 浅見はこくこくと首を上下させた。

「そんなの見てりゃわかるでしょ」咲はなんてことのないような口調で言った。

 浅見はパニックで目が泳ぎ、顔は林檎のように真っ赤になっていた。傍目から見てもその様子は愉快なようで、通りかかった女子中学生たちがくすくすと笑っていた。

「どうしたんですか、咲ちゃん、浅見くん?」二人の後ろを歩く小鳥が声をかけた。

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