ラーメンを食べに行こう!
〈10〉
勿論、浅見は反対した。そもそも浅見にとっては、今日は念願の二人きりのデートだったのだ(デート場所がラーメン屋という物悲しい事実については、浅見は深く考えないようにしていた。なにより重要なのは、二人きりであることなのだから)。
しかし、浅見は行動を起こすのが遅すぎたし、なにより咲と加賀美の同行を小鳥が喜んで迎えたために強く反対することが出来なかった。こんなことで小鳥と敵対してしまっては元も子もない。
結局は、小鳥、浅見、咲、加賀美の四人で目的地のラーメン屋に行こうということに決定した。
浅見の案内のもと、商店街を四人で歩いていく。
浅見のテンションは地の底まで落ちたが、反対に小鳥と加賀美は今にも羽が生えて飛んでいきそうなほどのハイテンションだった。
「へえ、加賀美ちゃんもラーメン好きなんだ。一緒ですね、仲間ですよ!」
「はい、仲間です! わたしもラーメン大好きですから!」
二人はきゃっきゃっとはしゃぎながら並んで歩いている。ラーメンという共通の話題で盛り上がる彼女たちは、まるで唯一無二の同志を見つけたかのように嬉しそうだ。二人の前を歩く浅見は、彼の隣に並んでいる咲に歩きながら話しかけた。
「あの、加賀美って子だけど」
「ん、なに?」
「うちの高校の生徒じゃないのか? 見覚えないけど」
浅見はちらっと後ろを振り返って言った。ぱっと見た雰囲気では、自分たちと同い年に見えるが、学校で彼女の顔を見た覚えはなかった。
「ん……、まあ、そうね。そういうことにしておいて」
渋るような言い方をしたのが気になったが、浅見は深く考えずに質問をつなげた。
「どこの高校の生徒なんだ? というか、学年は俺たちとタメなのか?」
その質問は、浅見にとっては単なる世間話程度のつもりだったが、質問を受けた咲はそうとは受け取っていないようだった。咲は口をへの字にして、慎重に発言の内容を吟味しているようだった。その表情を見て、浅見は自分が何かまずいことでも言ってしまったのかと考えたが、そんな話題を振ったとは思えなかった。
「あの子はね」咲は落ち着いた静かな口調で言った。「ちょっと訳ありでね。なんて言ったらいいか……わたしたちとは在り方からして違うから」
「……?」
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