ラーメンを食べに行こう!
〈6〉
「……おかしい」
小鳥との待ち合わせ場所に指定した駅の改札口で浅見は一人たたずんでいた。駅の時計を見ると、針は五時半を指していた。
浅見は五時にこの場所に集合することを小鳥と約束していた。しかし、約束の時間から半時間が過ぎても小鳥は現れなかった。
浅見の知っている新月小鳥は決して時間にルーズな人物ではない。その彼女が待ち合わせに三十分も遅れるというのは考えにくかった。連絡を取りたかったが、浅見は彼女の自宅や携帯の番号を知らなかった。待ち合わせの約束を交わしたときに、さりげなく番号を交換するべきだったと、今更ながらに後悔した。
こちらからも向こうからも連絡が取れない以上、この場所を動くこともできず、浅見は辛抱強く小鳥が現れるのを待つことにした。遅刻の理由は不明だが、おそらく彼女にも、やむにやまれぬ理由があるのだろう。浅見は少しも疑いを持つことなく、素直にその可能性を信じた。
駅前の人通りはそれなりに多い。ホームに電車が入ってくるたびに、人の群れが改札から出てきては浅見の視界を横切っていく。その様子をぼうっと眺めていた。主婦やスーツ姿、それに浅見と同年代くらいの学生が束となって駅から出てくる。その中には男女連れ添って歩いている者たちもいた。そんな光景を見るたびに、言いようのない虚しさを感じ、浅見は小さくため息をついた。
六時になっても小鳥は現れなかった。
それほど気負わずに待っていた浅見だったが、徐々に不安になってきた。頭に浮かんでくる可能性のいくつかは、決して口に出して認めたくはないものだった。浅見は自分を落ち着かせるために大きく深呼吸をして、その想像を頭から追い払った。
「…………」
浅見が無意識に足踏みを始め、周囲をきょろきょろと見回し始めた頃。突然、改札の方から浅見の名前を呼ぶ声がした。
「あれ? 何で浅見がここにいるの?」
期待をこめて声の主を振り返ると、そこにいたのは残念なことに浅見の待ち人ではなかった。
「……なんだ、早野かよ」落胆した声で浅見が言った。
改札から出てきたのはクラスメイトの早野咲だった。彼女は改札を抜けると真っ直ぐに浅見の所へやって来て、「ねえ、どういうこと?」と言った。
|次へ|
|戻る|
|目次|