群像叙事詩風ノベルゲーム
「セレスティア・サーガ」
それは一本の剣を巡る物語。


『セレスティア・サーガ』は、どんなゲームか?

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『セレスティア・サーガ』に関する説明は上記をご覧ください。
 本項では、さらに知りたいという方へ向けて、似た要素を持つ作品を挙げながら、作品の背景をご紹介します。
 まずは、マーク・ローズウォーターのあるコラムから、アイデアの説明の仕方についての文章をひとつ引用させてください。

ハリウッドには、スリービートと呼ばれる考え方がある。アイデアを売り込むときには、それを経営者が既に知っている言葉で表さなければならない。スリービートでは、それは常に「『そのメディアで有名な例』と『そのメディアで有名な別の例』を組み合わせたものです」となるんだ。たとえば、私がテレビ番組を売り込もうとするならば、「『グリー』と『ロスト』を組み合わせたものです」と言うことになるかもしれない(「緻密に作られた神話にまつわる謎を、主人公たちが歌を通じて解き明かしていきます」と言うんじゃなくね)。映画を売り込もうとするならば、「『アバター』と『アイアンマン』を組み合わせたものです」となるかもしれない(「ロボットとエイリアンが戦うんです。最高でしょう?」じゃなく)。

『セレスティア・サーガ』は、どんなゲームか?

『ヴォーパルス』と『サガ フロンティア2』を組み合わせたものです。



『ヴォーパルス』は、2011年春にI was game様が発表されたカードゲームです。プレイヤは、とある島の覇権を狙う諸侯のひとりとなり、ドラフトと呼ばれる手法でカードを獲得しながら、自分の軍隊を編成し、近隣の領主と100年という長きに亘って争いながら民の崇敬を集めていくことになります。
『セレスティア・サーガ』は上記説明にもある通り、ある意味『ヴォーパルス』の二次創作となります。「作中で100年という時間が流れること」と「ベヒモスや軍師をはじめとした登場人物」は『ヴォーパルス』の設定を、そのまま拝借しております。その一方で本作はオリジナルの設定も多く含みます。ゲームを繰り返しプレイすることで見えてきた仕掛けや、カードに描き込まれた設定の断片に、独自の解釈を加え、ひとつの「物語」に昇華しています。



『サガ フロンティア2』1999年にスクウェアがリリースしたRPGです。魔法が存在する架空の世界の中世を舞台として、ギュスターヴ13世とウィル・ナイツという、ふたりの人物の人生と時代の流れを追っていくというゲームです。
『セレスティア・サーガ』が『サガ フロンティア2』と重なる部分は2つあります。ひとつは「エピソードを抽出し、全体の一部をゲーム化することで歴史の流れを表現していること」で、もうひとつは「一本の剣を巡る物語」であることです。『セレスティア・サーガ』では、余計なエピソードを省き、ひとつの歴史における転換点となるような事件のみを描くことで、時間の経過を表現しています。また剣というモチーフで一貫性を持たせています。

『セレスティア・サーガ』は、そんなゲームです。

その他のいくつかの要素

『セレスティア・サーガ』との関連を見て取れる作品は、他にもあります。

 そういった作品を列挙することで、『セレスティア・サーガ』が数ある文章作品の中で、どこに位置づけられるかを見ていきたいと思います。





 130巻という膨大な冊数を誇る未完の大作──ヒロイック・ファンタジィ『グイン・サーガ』は、真っ先に挙げなくてはならない作品でしょう。『セレスティア・サーガ』と同じく、サーガ(英雄譚)という言葉がタイトルに含まれるだけでなく、主人公が記憶を失くした異世界の住人であったり、中原を中心に草原や沿海州と広大な世界が広がっていたり、共通点は多いです。
 タイトルに「サーガ」という文字を加えるにあたり、意識したことは、それが英雄の物語でなければならないということです。もうひとつは、壮大な世界を表現するために、多様な人種と複数の国家を描く必要があると考えていました。そこには、もちろん誰もが主人公でありうる『ロマンシング サ・ガ』の影響もありました。
 サーガの面白さは、何と言っても魅力的な世界観でしょう。その架空の世界に読み手を誘うのに、記憶を失くした主人公は絶好の題材です。還る場所を持たない英雄と共に、是非、この、ひとつづきの大地の世界を探訪してください。





 もうひとつ小説作品を選ぶならば、大河ノベルと銘打たれた『刀語』も外せないでしょう。
 刀を使わない剣士が12ヶ月に亘り、12本の変体刀を入手するために、12人の剣士と戦うというのが物語の根幹ですが、注目すべきは舞台が尾張時代と呼ばれる中世の日本であることでしょう。作中に登場するある占い師は、この作品にて描かれている歴史を「偽りの歴史」と騙りましたが、『セレスティア・サーガ』における極東の国々も、また偽りの歴史の果てにあると言っても過言ではないでしょう。
 極東、東方、東洋、倭服、倭人、倭風。
 これらのキーワードは作中に何度か出てきます。中世日本を思わせる描写もあります。しかし、現実の、中世日本とは、何処かズレています。そういった物語の裏側、歴史の裏側を覗き見て頂ければと存じます。





『セレスティア・サーガ』はノベルゲームであるが故に、作中にはBGMも流れます。残念ながらケルト音楽を流すことは出来ませんでしたが、仮に幾つかの偶然が重なって、主題歌がつくとするならば、歌い手はエンヤでしょう。
 ケルト音楽を下敷きとした音楽を展開する彼女は『ロード・オブ・ザ・リング』の主題歌「メイ・イット・ビー」を担当しており、ファンタジィ作品との相性は高いです。また初期の作品には、神話をモチーフに歌詞を作り込んでおり、『セレスティア・サーガ』との親和性は高そうです。
 ノベルゲームにおける音楽の要素は大きいです。小説は読み手に対し「こういう音楽を聞きなさい」と指示を出すことは出来ませんが、ノベルゲームは、ある程度、作り手が操作することは可能です。そして、その結果、読み手に対して無音で読んだとき以上の感動を与えることが可能です。『セレスティア・サーガ』のテーマ曲(スタッフロールで流れます)は、『PNOS』でも使ったもので、まさに「冒険」を具現化した音楽と言えましょう。





 音楽を取り上げたならば、もちろんイラストも取り上げなくてはならないでしょう。『セレスティア・サーガ』の繊細な世界観を表現するために、今回はkaz。さんという新進気鋭のイラストレータにパッケージイラストをお願いしましたが、時と場合によっては、それが天野喜孝であったという可能性もなくはなかったでしょう。
『ファイナルファンタジー』シリーズのキャラクターデザインやイメージイラストを手がけ、先の『グイン・サーガ』の表紙と口絵も一部担当し、また2525年という「遠未来」の秋葉原を描いた白黒のイラストをニコニコ動画に提供し、動画制作者たちを湧かせたことは記憶に新しいです。
『セレスティア・サーガ』の作中に登場人物たちのイラストは登場しません。それは、せっかく文章と絵とを融合できるノベルゲームという媒体にあって、大きなデメリットになり得るでしょう。しかし、よく言われる通り、ひとの想像力は無限大です。そして、文章から喚起された想像の絵こそが、その読み手にとって最も美麗な絵になるうるかもしれません。では、その志向する先は? 天野喜孝の画風は繊細にして妖艶にして幻想的と謳われます。本作の志向する先も同じです。





 ゲームからも文章からもどんどん離れ、ついにライブDVDにまで辿りついてしまいましたが、この項の末尾を飾るのは、やはりRevo率いる幻想楽団による作品を取り上げないわけにはいかないでしょう。
 かつて同人音楽を手がけていたRevoは、物語性のある歌詞を、組曲的な音楽に乗せて、物語音楽を展開しました。デビューしてからは、さらにその規模を拡大し、物語音楽を、実際に舞台で演じるようなコンサートまで始めました。『Roman 〜僕達が繋がる物語〜』は、数ある作品の中でも、特に歴史をテーマとしたもので、ひとつの歴史の表舞台/裏舞台に登場する英雄やそうでないものを取り上げた作品です。
 さんざん繰り返した言になりますが、その手法は、まさに『セレスティア・サーガ』で用いているものに通じます。ただ、こちらは文章の力に依るところが大きいため、インパクトは薄いかもしれません。しかし、個々の物語を読むのに要する時間は、一曲の演奏時間と比すると長く、その分、重厚であるとも言えるでしょう。



 幾つかの作品を紹介することで『セレスティア・サーガ』が何を志向し、何処へ位置づけられたいと考えられているか、少しでも伝わればと思う次第です。
 また、作り手の意識を感じ取って頂くことで、より深く『セレスティア・サーガ』を楽しんで頂けたならば、作者として、それに優る喜びはありません。
 最後にもう少し。
 前述の通り本作は『ヴォーパルス』の二次創作であり、本項もI was game様の「ドラフト式カードゲーム『ヴォーパルス』の紹介 第2回」に深いリスペクトを示して作られた宣伝になります。一部、過剰な表現もありますが、どうぞ寛大なる御心でご高覧頂ければ幸いでございます。

以下、何事もなかったかのようにいつもの。

◆内容紹介◆

2011年8月13日発表

テーマ
“Vorpals”
 I was game『Vorpals』の設定を拝借した、連作短編ノベルゲームです(Windows用)。
 2011年夏コミにて初頒布(500円)。
 体験版公開中、クリックしてダウンロードしてください。

イラスト:kaz。様
Hero(勇者)
「あんたが俺を呼んだんだろう」
 極東に現れた男。

Nagi(凪姫)
「ええ、連れて行ってくださいますか?」
 凪の国の姫。

Hakuto(ハクト)
「変えなくてはならない。この僕が」
 薙の国の王子。

Soldier(剣士)
「ハクト王……あなたはなんと罪作りなお人なのだ」
 那岐の国の剣士。

R03(執行の悪魔)
「よかろう」
 執行の悪魔。

Nina(ニナ)
「兄ちゃぁぁぁんんんんん!!!!!」
 森の国の少女。

Hero(ヒデオ)
「きっと僕が、その剣の英雄なんだろう」
 剣の英雄。

Tec(テック)
「余はテック。この国、最後の王……だ」
 鉄の国の王。

Soma(ソーマ)
「この世界の因果にボクは存在しない」
 渡り鳥。
◆登場人物◆

名前とその意味。
◆世界観◆

背景とその意味。
R05(大蛇)
 レアカード。

R02(軍師)
 レアカード。

R03(執行の悪魔)
 レアカード。

R11(腐敗の王)
 レアカード。

R07(鉄巨兵)
 レアカード。

R08(トーテム像)
 レアカード。
《スカイ》シリーズ
「スカイ・スクレイパ」
「スターリストリィ」
「スカイトスフィア」
◆シリーズ紹介◆

作品は個々に完結しています。
前作を読んでおく必要はありません。
◆感想御礼◆

リンクさせて頂きます。
まだなし。